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会長からのメッセージ
第六代目会長 嶋中 雄二
白鷗大学 教授・岡三証券株式会社 エグゼクティブエコノミスト
-2024年12月7日就任-
 2024年12月の理事会・総会で、第6代会長に選出されました嶋中でございます。少々お時間をいただき、ご挨拶させていただきます。これから3年間、村田副会長と新任の宅森副会長、林副会長、水野副会長の4名の副会長をはじめ、常務理事・理事・監事、それに事務局・幹事の皆さんと共に学会の会務を総理・執行して参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、景気循環学会は2025年で創立40周年を迎えますが、当時の篠原三代平・初代会長も、「戦後40年」という形で、やはり40年を振り返っておられます。本日は、これを踏まえて、本学会創設の原点に立ち返り、併せて私が大切だと思っております、方向性について考えてみたいと思います。
 1986年6月に創刊された機関誌『景気とサイクル』の第1号の巻頭言で、篠原先生は、次のように仰っています。「1970年ごろまでの世界経済は長期繁栄を享受し、いわば成長のエポックを画した。しかし、これを分析するエコノミストの側では、成長一辺倒に傾斜し、成長を“originate”する背景的事実である、投資の循環的ダイナミズムの実証的・理論的分析を長い間怠ってきた感なしとしない。これに加えて、ケインズ的思考は“循環克服”可能の確信をポリシー・メーカーやエコノミストたちに植えつけた。しかし、戦後40年を回顧したときに、それはどうやら幻想であったことは確実であろう」と。

篠原初代会長の思い

 こうした発言からは、戦後40年間にわたって軽視され続けてきた景気循環の復活への並々ならぬ思いが伝わってきます。ただ、同時に、篠原先生は、次のように付け加えることを忘れませんでした。すなわち、「景気循環学会の出発に当たり、もちろん第1には循環重視のリバイバル派だけでなく、それに反論を提出したい人々をも広く包括して前進して行くべきだということを、ここで確認しておきたい。そして第2には、学会創設の動機が主として民間エコノミストの間から発生したことを世間の人々に知っておいていただきたい。第3に、この学会はあらゆる型の循環運動(短期・中期・長期の循環)の研究をすべて含むものでありたい」と。
 篠原先生は、これらを有言実行されました。私が特に感銘を受けましたのは、第1の点です。第2代会長に、ケインジアンとして名高く、楽観的な成長予測を得意とされていた、日本経済研究センター会長の金森久雄さんを指名され、また景気循環論は間違っているとの説を激しく唱える並木信義さん(当時、日経センター研究主幹)を学会の大会の基調報告者として招待し、大いに批判を歓迎したのです。

歴代会長の実績

 第2代の金森久雄会長は、日本を代表する官庁エコノミストでした。「貿易特化係数」の考案者としても有名ですが、とりわけ景気予測に価値を見出し、循環よりも変動を本質と捉え、「政府の賢明」を前提とした楽観論を提唱しました。また、景気循環学会と共同で『ゼミナール景気循環入門』(東洋経済新報社、2002年)も著されました。
 第3代の森一夫会長は、学会出身であり、伝統的な景気循環論者として、また内閣府経済社会総合研究所景気動向指数研究会の座長として、景気基準日付の設定を巡る議論に強い指導力を発揮しました。そして2002年、日本の短・中・長波がすべて上昇で重なると指摘され、後の私のゴールデン・サイクル説にも大きな影響を与えてくださいました。
 第4代の中原伸之会長は、実業界出身の論客でした。フォワード・ルッキングの達人として、様々なサイクルやテクニカル要因を駆使した予測を行う一方、日銀審議委員時代には、金融政策について物価目標付き量的金融緩和政策を提唱し、学会でもリフレ派論客の参集に尽力されました。そして、「中原奨励賞(現在の中原記念奨励賞)」を創設し、多くの若手研究者を育成されました。
 さらに第5代の池田吉紀会長は、日経新聞出身のジャーナリストであります。ベストセラー『ゼミナール日本経済入門』の著者で、学会の事実上の創設者の一人でもありました。ローレンス・クライン門下で、実践的なマクロ計量モデルを用いた日本経済予測の先駆者かつ経済学説の古典の探究者としても知られます。長らく機関誌『景気とサイクル』編集長として健筆を揮い、「中原奨励賞10周年記念特別号」を発刊するなど、機関誌を通じても学会の発展に大きく貢献されました。
 さて、こうした偉大な5人の会長の後を継いで、新会長に選出されました私としては、学会創設の原点に立ち返って、納得のゆく運営をしたいものだと思います。私の志向する学会運営の基本方針は、次の5点です。

5つの基本方針

 第1に、「篠原景気循環論」のルネッサンスを目指します。意識的に、会員による新しい規則的な循環現象(短・中・長・超長期等)の発見を奨励すると同時に、学界とも連携して、循環に関しての新規の理論的・実証的研究を促進していきたいと思います。
 第2に、景気循環学会の歴史的沿革を踏まえ、今後も引き続き、民間・官庁エコノミスト、学者、ジャーナリストにご協力いただくとともに、学会規約に基づき、新たに評議員制度を活用して、学会運営について、理事会OBの有識者に助言を求めたいと存じます。
 第3に、循環論対変動論・構造論、政策論ではリフレ派対アンチ・リフレ派、積極財政派対財政再建派など、様々に意見の異なる立場があっても、篠原名誉会長の理念を胸に、学会の前進に資するため、循環論を中心に据えつつ、他のあらゆる立場にも寛容かつ中立的に、特に政策論的には1つの立場に片寄らず、バランスよく対応していきたいと考えています。
 第4に、大会・定例研究会・各研究部会・機関誌・HPなどすべての学会活動の一段の活発化を目指す中で、特に理事・幹事を含め、若手の会員にさらなる活躍の場を提供していきたいものです。また、そのための不可欠な財政的基盤としても、通常会員(景気循環の研究に関心を持つ個人)に加え、特別会員(本学会の事業に賛助する団体(企業その他)または個人)の一層の増強を図りたいと思っております。
 そして第5に、「昭和100年」でもある2025年は、学会創立40周年を記念して、是非、それに相応しい大会とし、また機関誌『景気とサイクル』の40周年記念号を発刊したいと考えております。当学会の活動の趣旨に賛同される方には、是非ともご入会いただき、また現在会員の皆様には、一段のご協力をお願い申し上げます。